ウィンダス森の区から東サルタバルタに出た門の前。
ここにもひとつ、この世界に降り立って間も無い頃の思い出があります。
まだチャットすらおぼつかなかったその頃、おそるおそるモグハを出て、フィールドエリアまで行くようになっていました。
ファーストキャラのタルタルでは所属国をウィンダスに選んでいたので、街の外に出るとそこに広がっているのはサルタバルタ。
サルタバルタと街を繋ぐ門の脇に、ある日、見たこともない大きなモンスターたちを次々に呼び出しているひとがいました。
召喚士。
という存在だけは知っていましたが、ヴァナで実際にその姿を、そして召喚獣たちを目にしたのは、それが初めてでした。
様々な召喚獣を出しては消して、を繰り返していたあの人は、今にして思えばスキル上げをしていたのでしょう。
ですが当時の私はそういうこともまったく分からず、ただ呼び出される召喚獣たちの迫力に、そんなことをたやすく繰り返しているその冒険者さんに、すっかり目を奪われてしまいました。
しばらく近くに立って見入った後に、おぼつかないながら、初めてエモートコマンドを使って拍手「/clap」をしました。
それからこれも初めて他プレイヤーに向けたチャットを「/say」で発しました。
何を言ったのかまでははっきりは覚えていないけれど、「初めて見ました、すごいです」というようなことを言ったと思います。
その召喚士さんが何を言ったのかもこれも覚えていないのですが、明らかに初心者であると分かるサポジョブも無くチャットすらおぼつかないタルタルに、邪険にすることもなく優しく接してくれました。
召喚士はジラートジョブで、ジラートが実装されたのは2003年4月。
私がFF11を始めたのは2003年12月だったので、召喚士が実装されてから半年以上経っていたことになるけれど、当時の召喚士は何かと高難易度なジョブでした。
エキストラジョブである召喚士は、スタンダードジョブがLv30になって初めて転職できるジョブであり、召喚士になるには「カーバンクルの紅玉」というなかなかドロップ率も取り合いも厳しいアイテムが必要でした。
加えてカーバンクル以外の召喚獣を手に入れるには、Lv60以上の高レベルにならないと実質不可能。
さらにいうと、当時召喚士になりたい人は「まずは白魔をLv60に上げる」ことがセオリーになっており、これは「白で召喚獣と契約するためのBFに参加する」ためでもありました。
当時の白魔はソロ最弱ジョブで、レベル上げにはPTが必須。当時はレベル上げにも大変な時間と労力を要する時代。レベル上げだけではなく、AFも揃えなければいけない。そして肝心の召喚獣BFも、6名フルPTでもそう簡単には勝てない難易度。
そういったいちいち手間がかかり、かつ簡単とはいいがたいハードルをいくつも越えなければ、召喚獣を手に入れることすら出来ませんでした。
「召喚士をやりたいけど、召喚獣と契約できないからやれない」という人が多く、実際に私の周囲にも何人もそういう人達がいたものです。
これらの事情を考えると、あの日ウィンダスの門前で出会った召喚士さんは、相当すごい冒険者さんだったことになります。
名前もはっきりとした会話内容も覚えていないけれど、あの光景だけは強いインパクトをもって未だに思い出すことができます。
その後冒険者としてこなれてきた頃に、私も召喚士を取得して育てることになるのだけれど、そのキッカケの1つにはあの日のあの光景がありました。
こういう「ほんのささやかなキッカケ」から別の物語が生まれていくことも、ヴァナにはいくらでもあったのだろうなと思います。