覚書き降り立った頃の思い出

セカンドパーティと初心者LS

私のファーストジョブは白魔道士、初パーティはケアル2を覚える直前くらいに誘われたシャクラミでのミミズ狩りだった。

初めてのPTプレイがとても新鮮で興味深かった私は、その後日サルタバルタの真ん中でふと思い立ち、自らPTをつくってみることにした。
単純にPTプレイをもう一度やってみたかったのと、そうとなったら誘われるのをぼーっと待っていられなかったのだけれど、今にして思うと初PTのすぐ次からオートリーダーを発動していたあたり、なかなか筋金入りの属性だったのだなと思う。

どこがPTでの狩り場に適しているのか、どういうふうに声を掛けるのがマナーなのかも何も知らないまま、初心者ならではの恐いもの知らずっぷりで、ウィンダス周辺にいた同レベル帯の人たちに、いきなり「PT組んでみませんか?」と声を掛けた。
私が当時降り立ったワールドサーバーは、新設されたばかりのAsura。ちょうど北米版サービスが開始されると同時に新設されたサーバーだったから、外国の人がとにかく多かったのだけれど、同時に初心者も多かった。
それが幸いして、ほどなくして初心者ばかりの6人PTが出来上がった。ウィンダスにはタルタルやミスラが多く、組み上がったPTはほとんどタルタルばかりだった。

半数くらいが「これが初PTです」という状態だったと思う。みんなまだLSもつけておらず(私だけは、先日メンバー募集シャウトをしていたLSに入っていた)日本語と日本人に飢えていたこと、みんな初心者で全てがまだまだ手探り状態という同目線なことも手伝って、PT会話はとても弾んだ。
「PTだし、タロンギに行ってみよう」ということで、みんなでやいのやいの騒ぎながらキリンを狩った。みんなそこまで勝手が分かっていない、というのもあって、たいして効率は良くなかったのかもしれないけれど、それはとても楽しいPTプレイだった。

別れ際に、みんなとフレンド登録をした。そしてこのときのメンツが、後に私が初めて作るLSの主要メンバーとなる。

このときのメンバーを中心に、この後も集まってよく遊ぶようになった。
先にも少し書いたけれど、この時点で私は既存LSに入っていたから、まだ自分たちでLSを立ち上げようという考えはなかった。けれど、初心者たちだけで集まって遊ぶことが増えるにつれ、LSでかわされる高レベルたちの会話の意味が分からなかったり、LSメンとはレベル差があって一緒に遊ぶこともなかったり…ということが重なり、次第に私の中に「初心者フレンド達で集まって、新規LSを作ってみたらどうだろう」という考えが生まれていった。

「自分たちのLSを」という気持ちは、他のメンツも同じだったようで、提案してみたら満場一致でLSを作ることになった。そのときは、みんなでバスにいたことは覚えている。なぜウィンからバスに、というのは覚えていないのだけど、レベル帯的に、コロロカでミミズ狩りでもしていたのかもしれない。ちなみにみんなまだジュノには行ったことがなかった。

「誰がリーダーになる?」と皆にたずねたら、「それはもちろん(私)さんでしょ」と即答された。提案したのは私だったし、そもそもの一番最初のPTから私がリーダーだったから、他メンツからしたらそうだったのかもしれない。
とはいえこのLSにおいてはリーダーというのも便宜上のものだったから、まぁいいかと引き受けることにした。

みんなでお金を出し合ってリンクシェルを購入し、開封して、めでたくみんなで同じパールをつけた。リンクパールをつけること自体が初めてだ、というメンバーもいた。みんなはしゃいでいたし、自分たちのLSだ、自分たちの場所ができたんだ、ということが、私もとても嬉しかった。

ちなみにそのとき私が所属していた既存LSでは、いわゆる「LSのかけもち」が禁止されていた。
当時の私は、中にはそういうLSもあるということも知らなかった。そもそも「かけもち禁止」というのは別にゲームシステム上でのことではなく、あくまでそのLSが決めたローカルルールだったから、あえて言われなければ知りようもない話だ。知っていたら、リンクパールをもらうときに確認していたと思う。

その既存LSのメンバーも、リーダーも、皆良い人たちだった。ファーストキャラでのサポ取りは、ここのリーダーが手伝ってくれた。けれどかけもち禁止である以上、このLSにいることはもう出来なかった。既にLSを作ってしまったことや、自分が便宜上であれリーダーになっていることを話すと、リーダーは快く送り出してくれた。

 

ともあれ初めて作ったLSは、「初心者みんなで遊ぼう」というところから発足した。
が、意識がフラットだったことから勧誘においてのルールをとくに定めず、全員をサック化してしまったことが、結果としてその後に崩壊を招くことになってしまった。

誰でも誘っていいとなると、本当に無節操に人を入れてしまう人も出てくるもので、当時の私達からするとはるかに高レベルなプレイヤーまでが入ってくることになった。
私が最初に所属していた既存LSがそうだったように、レベルが大幅に違い、ましてそれなりのプレイヤー達と初心者達とでは、高レベル側が歩み寄ってくれない限り、どうしたって会話は噛み合わない。
LSチャットに流れ出した高レベルプレイヤー達の会話は、私達初心者にとって、完全に「意味不明の呪文」だった。
加えて高レベルプレイヤー達は、彼らを引き入れたメンバーとは会話をするけれど、それ以外とはとくに話そうとしなかった。
正直なところ、ここでの経験から、私は「高レベルプレイヤー」に対し「とっつきにくい」とか「恐い」とかいうネガティブなイメージさえ持つようになってしまった。

そして高レベルプレイヤー達を引っ張ってきた一部のメンバーは、彼らの力を借りてあっという間にジュノに到達し、カザムパスを手に入れ、ミッションランクを上げていった。
それらを見ていた私は、「これは、やりたかったことと何か違う」と強く感じた。
高レベルプレイヤー達を引き入れたメンバーが悪いわけではない。「誘ってはいけない」という決まりを作っていなかったのだし、そのメンバーはこうも言っていた。
「強い人の力を借りて進んでいけば楽じゃないか」と。
そのメンバーも、良かれと思ってやったにすぎず、そもそもプレイスタイルなんて千差万別なのだから、どちらが正しいとか正しくないという話でもない。

けれどこのLSが、当初の思惑から大きく逸れた状況になってしまったことは確かだった。

私もむやみな苦労をしたいわけではない。けれど、少なくとも「高レベルプレイヤーの力を借り、苦労も冒険もなくあっさり進んでいく」やり方は好むところではないのだと、このときはっきり悟った。
何もかもをおんぶにだっこでは、そこには自分の求める「楽しさ」は無い。冒険を楽しみながら、試行錯誤しながら、効率は悪くても、この未知の世界を手探りで進んでいきたいのだ、と思った。

フレンド達となけなしのお金を出し合って、やっとのことで作ったLSが、見も知らない高レベル達にあっという間に占拠されてしまったのも、正直腹に据えかねた。
とても悲しくて残念だったけれど、このLSを出よう、と決意した。

フレンドである初期メン達にこの話をしたら、皆もLSの現状に疑問を抱いていたようで、一緒にLSを抜けることになった。
あえてシェルを割ることはしなかったけれど、そのLSが廃れるまでに時間はかからなかった。

 

初めて作ったLSから離脱した後、私達は再びリンクシェルを買い、LSを立ち上げ直した。
ここで皆であらためて決めたことが「初心者限定のLSにしよう」ということだった。
最初のLSの惨状から、高レベル帯の人達がLSに入ってくることに対して、皆抵抗感を抱くようになってしまっていた。何より「初心者同士」という同じ土俵で遊ぶことに、みんな意義を見出していた。

高レベルプレイヤーをやみくもに拒否したわけではなかったし、先のLSに入ってきた高レベルたちにしろ、そもそもLSの事情をよく知らなかったのだから、何も悪くはない。
ただちょっと、求めるプレイスタイルが違っていた。少なくとも私を含める初期メン達には、高レベルプレイヤーからなんでも助けられるのではなく、「自分達で出来ることは自分達でなんとかしたい」という気持ちが強くあった。

いろいろと学んだ私達は、今回は初期メンのみをサック化し、メンバーを募集するときに必ず「初心者限定」と断るようにした。
初心者が多いタイミングだったこと、外国人が多く日本人LSを求めるプレイヤーも多かったことなどもあり、このふたつめのLSは順調にメンバーを増やし、当初自分たちが思い描いていたような場所に、次第になっていった。

 

この「初心者LS」はけっこう長いこと順調に運営されていたけれど、最終的にはここも解散となる。
メンバー各々がプレイしていくうちに、自分のやりたいことやプレイスタイルを見出していき、「初心者」LSという縛りに次第に沿わなくなっていった。もちろんただの雑談LSとしての機能も持ってはいたけれど、効率の良いプレイや良い装備集めに重きを置くようになったメンバー達は、次第にLSから離れていった。

このLSがなくなった理由は他にもあるのだけれど、ぶっちゃけそれはリアルに飛び火するトラブルが原因だったので、ここでは詳しくは書かないことにする。

ただ結果として、私はファーストキャラを封印し、「タルタルのシャントットフェイス」という可愛らしいキャラとはわりと真逆をいく「エルヴァーンの男性」に転生した。そして「リアル情報と性別は絶対に洩らさず、あくまでエル男子としてのロールプレイをしながらヴァナで過ごす」ことを決意した。

何よりも、ファーストキャラでプレイするうちに見舞われたアレコレで、あらためて強く感じ、決意したことがある。それは「私はヴァナで冒険がしたい」ということだ。ヴァナ・ディールという世界に、私はゲームをしにきているのであって、それ以外のことをしたいわけではない。あくまで「FF11というゲームをプレイしたい」のだと、強く思うようになった。

再認識した「ヴァナで冒険がしたい」という気持ちは、転生したエルヴァーンでのプレイスタイルの主軸となり、今に到るまでそれは続いている。